86年『Boon』シリーズの一部(出演:マイケル・エルフィック、レイチェル・デイヴィス他)、90年『Forget
About Me』(出演:アッティラ・グランドピエール他)、92年『Under the Sun』(出演:ケイト・ハーディ、ステラ・メイリス他)、93年(92年説も)『Ngaio
Marsh's Alleyn Mysteries』シリーズの一話「Death at the Bar」(原作:ナイオ・マーシュ/出演:ポール・ブルック、パトリック・マラハイド、ケイト・ハーディ他)、同じ93年『心理探偵フィッツ(Cracker)』の2時間パイロット版「告白の罠(原題:The
Mad Woman in The Attic=屋根裏の狂女)」(出演:ロビー・コルトレイン、クリストファー・エクルストン他→96年10月にNHK衛星放送にて放映)、94年(92年説も)『Love
Lies Bleeding』(出演:マーク・ライランス、ジェイムズ・ライランス、ティム・ローン他)などを監督。同じ94年発表の、4話からなるミニシリーズ『Family』(脚本:ロディ・ドイル/音楽:エルヴィス・コステロ、ジョン・ハール)で、ライターズ・ギルドのシリアル・ドラマ賞、王立TV協会ドラマシリーズ賞、“ヨーロッパ大賞”の94年ヨーロッパTV番組賞を受賞し、95年のイギリス・アカデミー賞シリアル賞候補にもなった。そして95年、TV用に監督した『GO
NOW』が、エジンバラ映画祭でプレミア上映されて評判を呼び、各国で劇場公開されることとなった(この作品で「ヨーロッパ大賞受賞」とする記事資料も複数あるが、確認できず)。ここから映画監督としてのキャリアがスタートする。以下、作品毎にちょっとコメントしつつ紹介。
1998年のベルリン国際映画祭コンペ部門に出品され、銀熊賞を受賞した劇場長篇4作目。海辺の町ファーヘイヴン(ヘイスティングがロケ地)を舞台に、ヒリヒリした渇望に似た感触が、エルビス・コステロの歌うテーマ「アイ・ウォント・ユー」と相まって全編に満ちるサスペンス・ラブ・ストーリー。母の自殺のショックで口を聞かなくなったホンダ少年(ルカ・ペトルシック)の見た、ある哀しい「恋愛事件」って趣きなのだが、若干舌足らずか。赤と青の色彩設計によるシーン毎の心理描写、ライブ映像の挿入、盗聴癖のある少年ホンダから見た荒れた視点などといった「映像的試み」と、複数視点で物事の見方が変わる事態への主題的アプローチが、少し噛み合って無いのかも。少年は一目惚れの弱味から、女性保護観察官はモチロン相手の犯罪歴から、かつての恋人ヘレン(レイチェル・ワイズ)を追い回してしまうマーティン(アレッサンドロ・ニヴォラ)を悪者と決めつけるのだが、実は…‥みたいな話で、謎としても観客の騙し方としても、ちょっといただけない。また、奇矯なキャラであるホンダとその姉でライブ歌手のスモーキー(ラビナ・ミテフスカ)とお爺ちゃんってヘンテコ一家(爺ちゃんはただの近所の人かも?)の方に、僕らの興味がいき過ぎちゃって、マクガフィンの域を超えてるようでもある。というか、砂浜に打ち寄せる遺物(化石や奇岩)を拾うようにして、この「恋愛事件」を拾ってしまった少年、という枠が、ちょっと壊れちゃってるのだ。その分、奇妙な「複数の」人間ドラマの魅力があったりもするんだけど…‥。あ、「エロティック・サスペンス」なんて評もあるなぁ(笑)。ま、凝った火サスとかそういう感じの小品。既に『チェーン・リアクション』『インディアナポリスの夏』『輝きの海』『スカートの翼ひろげて』などに出ていたレイチェル・ワイズの、女優としてのターニング・ポイントとなったようで、この後『ハムナプトラ・失われた砂漠の都』『スターリングラード』『ハムナプトラ2
黄金のピラミッド』といったメジャー作で活躍するのだ。1999年1月日本公開、ってことは日本では5番目の紹介作か。ビデオ題は『I
Want You あなたが欲しい』で、今出回ってるプレス資料では『あなたが欲しい』にされてるのも多い。
出演:デヴラ・カーワン、クリストファー・エクルストン、イヴァン・アタル他
99年の5作目。一転して「ラブコメ」に挑戦、と作風の違いを評する向きも多いが、出だしの感触は『GO
NOW』みたいだし、夫は『日蔭のふたり』のクリストファー・エクルストンだし、僕は結構ヒヤヒヤして観た。不妊に悩む結婚5年目の夫婦って方向が見えてきて、「あ、男性側に問題があることになると『GO
NOW』だよなぁ」と思っていると、フランスから妻の「元」文通友達ってのが突然現れて、掻き回す展開に。妻の実家を手伝うために警官を辞めたことを悔いはじめる夫の姿は『日蔭のふたり』にダブり、でも相変わらず激しいファック・シーン描写は健在で、物凄く心配しながら観てしまったので、何だかハッピーなオチってのは、ちと呆気無かったりして…‥。でもラブコメにしては野暮ったいのは、やはり地域的リアリティへの細かいこだわりが随所にあるからかも。なにせ舞台となる町は北アイルランドのベルファースト、夫婦は労働者階級の共稼ぎ、なんてのを律儀に肉付けしてあるからなぁ。やはりウィンターボトム味はしっかりするリアル恋愛騒動もの、ではあるのだ。しかしフランスからの闖入者のロマンチック野郎の今後だけは心配(笑)。アイルランド問題に詳しいと、より愉しめるのかも(ココが参考になる)。そうそう、原題はU2の曲「With
or Without You」から来ていて、80年代英国音楽(アイルランド・ロックか?)がBGMなのだった。そういやU2のボノが主人公の友人として本人役で出てくる、苦い恋愛論映画『ウィズアウト・ユー』(原題は『Entropy』、監督は『U2/魂の叫び』のフィル・ジョアノー)ってのもあった。あ、『いつまでも二人で』の日本公開は2000年11月。